売り出し価格を3980万円に決めた。
数字の根拠も、自分なりに腹落ちしている。
でも、ここで終わりではなかった。
価格を決めたあと、
もうひとつ大切なことが残っていた。
「この家は、誰に届けばいいんだろう?」
不動産は「たくさんの人」に売る必要はない
最初は、
できるだけ多くの人に見てもらった方がいいのでは、
と思っていた。
でも不動産は、
日用品でも食品でもない。
この家を買うのは、
たった一組の家族だ。
ならば、
不特定多数に薄く届けるより、
「この家がちょうどいい」と感じてくれる人に
しっかり刺さる方がいい。
そう考えるようになった。
この家を選ぶのは、どんな人だろう
私は、
この家を選びそうな家族像を、
かなり具体的に想像してみることにした。
年齢、家族構成、仕事、収入。
休日の過ごし方。
家に求める価値観。
ぼんやりではなく、
一人の人間として思い描く。
私が設定したペルソナ
想定したのは、こんな家族だった。
30代の夫婦と、5歳の子ども。
共働きではあるけれど、
子どもが小さいうちは、
どちらかが少しペースを落としている。
夫は堅実な性格で、
新築にも憧れはあるけれど、
「価格と質のバランス」を重視するタイプ。
妻は、
子育てと家事がしやすいことを大切にしている。
世帯年収は600万円前後。
頭金は500万円ほど。
35年ローンで、
無理のない返済計画を立てたい。
月々の返済額は、
できれば11万円前後。
そんな家族だ。
ペルソナが決まると、見せ方が変わる
この家族を思い浮かべた瞬間、
伝えるべきポイントが自然と絞られてきた。
- 学校やスーパーが近いこと
- 駅までの距離
- 子どもが育てやすい環境
- 収納が多く、生活動線がシンプルな間取り
- 車を2台持てること
逆に、
この家族にあまり響かない要素は、
前に出す必要がないと気づいた。
不動産広告は「スペック表」ではない
スーモなどに掲載する広告は、
基本的には不動産会社が作ってくれる。
でも私は、
それをすべてお任せにはしなかった。
ペルソナに届く言葉を、
こちらから提案することにした。
A4一枚に、
この家の強みと、
暮らしのイメージを文章でまとめた。
「広いリビング」ではなく、
「昼間は自然光が入って、
子どもがリビングで遊んでいても
目が届く間取り」。
「駅近」ではなく、
「通勤には便利だけど、
家の周りは意外と静か」。
数字だけではなく、
暮らしの空気感が伝わるように意識した。
伝えたかったのは「ここでの生活」
不動産広告というと、
どうしてもスペックの羅列になりがちだ。
でも、
買う人が本当に知りたいのは、
ここでどんな毎日が待っているかだと思う。
朝の光の入り方。
帰宅したときの安心感。
週末の過ごし方。
この家での生活を、
少しだけ先に体験してもらう。
そんなイメージで、
広告文を整えていった。
一人に刺されば、それでいい
不動産は、
100人に「まあまあいいね」と言われる必要はない。
たった一人に、
「この家がいい」と思ってもらえればいい。
その一人が、
どんな人なのかを考え抜く。
それだけで、
売却の精度は大きく変わる。
そう実感したのが、
このペルソナ設定のプロセスだった。
そして、市場に出す準備が整った
価格を決め、
誰に届けたいかを明確にし、
広告文も整えた。
あとは、
市場がどう反応するかを見るだけ。
正直、
期待と不安が半分ずつだった。
でも、
ここまで考えてきたことを思えば、
やるべきことはやったという感覚もあった。
次はいよいよ、
内覧という実戦の場に進む。
次回は、
内覧で私が意識したことすべて。
掃除、におい、迎え方、
そして「売り込みすぎない」という選択について書こうと思う。
売却は、
ここから一気に動き出した。
——続きます。
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