先日、夫の面会に行ってきた。
特別なことをしたわけではなく、コンビニで小さなおやつを買って、一緒に食べながら昔話をしただけの時間だった。
同じ話を何度も繰り返した。
若い頃の出来事、楽しかった旅行、少し無理をした日のこと。
何度も聞いているはずなのに、そのたびに当時の気持ちが蘇る。楽しかった感覚や、少しの緊張、胸が高鳴った感じまで一緒に戻ってくる。
そのとき、ふと思った。
昔話そのものが、人生の資産なのかもしれないと。
思い出は不思議だ。
話すたびに減るどころか、むしろ膨らんでいく。
記憶は少しずつ美化され、現実よりもやさしく、楽しい形で残っていく。
まるで複利で増えていく資産のように、何度でも味わい直すことができる。
モノは使えば消費される。
壊れたり、古くなったり、やがて手放すことになる。
けれど経験は違う。一度味わえば、体が動かなくなっても、何度でも心の中で再生できる。
歳を重ねると、昔話ばかりするようになると言われることがある。
確かに、若い頃のように体力はないし、新しい刺激を次々と取りに行くことも難しくなる。
でもそれは、単なる懐古ではなく、これまで積み重ねてきた経験を、ゆっくり味わう時間なのだと思う。
知らない人に武勇伝のように語れば、うるさがられるかもしれない。
けれど、一緒に歳を重ねてきたパートナーと、同じ思い出を温め直す時間は、静かで豊かなものだ。
夫のように体が思うように動かなくなると、積極的にお金を使うこと自体が難しくなる。
食事もたくさんは食べられないし、遠出も簡単ではない。
だからこそ、お金を貯めることが大切なのは大前提として、使えるときに、使える形で使うことの重要さを感じる。
お金をモノに変えるだけでなく、
お金を思い出に変える。
それは後になっても価値が減らない、むしろ増えていく使い方だと思う。
今、思春期の子どもにもよく言っている。
「友達との時間を大切にして」と。
中学や高校の放課後に、友達と食べるハンバーガー。
あの何気ない時間は、大人になってからではもう味わえない。
あの頃だからこそ成立する時間で、きっと将来、何度も思い出すことになる。
お金を貯めることも大切。
でも同時に、人生の中でしか作れない思い出があることも忘れたくない。
思い出は減らない。
使えばなくなるどころか、時間とともに価値を増していく。
そう考えると、経験への投資は、やはりとても効率のいい資産形成なのだと思う。
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