沖縄ハレクラニで見つけた「願いの叶え方」──ハワイじゃなくても届いた、ふたりの小さな幸福

夫がある日、ぽつりと言った。

「ハワイに行きたいなあ」

彼の願いはいつも唐突で、素直で、
どこか子どもみたいに真っ直ぐだ。
介護にお金がかかるのにそんなこと言うのも
彼らしくて可笑しくなる。

本当に連れていけたらいいけれど、
体調や移動の負担、環境の違いを考えると、
今の私たちには少しハードルが高い。

でもその願いを、
なかったことにはしたくなかった。

何か方法はないだろうかと考えた末、
私はひとつの答えにたどり着いた。

「沖縄のハレクラニに行こう」

あそこでなら、
ハワイに限りなく近い風を感じられる。

 


旅に出る前に、ひとつだけ心配があった

旅を決めた時、
胸の奥に小さな不安があった。

家とは違うベッドで、
彼が夜を安心して過ごせるだろうか。

ラグジュアリーホテルの白いシーツは、
清潔で美しくて、
ふたりにとっても特別な場所。

だからこそ、
彼が気遣いをせずに眠れるようにしてあげたかった。

私は旅の準備の中に
そっと“安心”を加えた。

ネットで探して見つけた
ベッドサイズの使い捨て吸水シート。
そして念のための消臭スプレー。

“備え”というより、
彼が気持ちよく休めるようにしたかっただけ。

彼はその工夫に気づいていない。
気づかなくていいと思っている。

それは“介護の事実”ではなく、
“思いやりの形”としてそっと包んでおきたいことだから。

 


飛行機を降りた瞬間、ハワイに少しだけ近づいた

沖縄の空気は、
南国特有のやわらかい温度がある。

空港から外に出た瞬間、
彼がふっと息を吸い込んで言った。

「ハワイっぽいね」

その一言で、来てよかったと思えた。

ハレクラニに向かう車の窓から見えた海は、
ハワイのように青くて、
どこまでも静かで、
ふたりの心をゆるめてくれた。

 


ハレクラニで過ごした、家族の“特別な時間”

ホテルの部屋に入り、
ふかふかのベッドに腰かけた彼の表情が緩んでいく。

きっと、家とは違う特別感に心がほどけたんだろう。

プールサイドで飲んだ
パイナップルの刺さったトロピカルカクテル。
海辺をゆっくり散歩した夕方の風。
ふたりの影が砂に並んで落ちていたこと。

その時間だけは、
介護も病気の影もふと横に置かれて、
ただの“夫婦”としてそこに立っていた。

「ハワイじゃないけど、ハワイみたいだね」

彼が笑ってそう言った時、
胸の奥がじんわり熱くなった。

 


願いを全部叶えられなくても、心はちゃんと届く

私はよく思う。

願いを
“そのままの形で叶える”ことだけが
愛情ではない。

できる範囲で
できる形に整えて
少しでも寄り添う。

その積み重ねが、
ふたりの人生を温かくしていく。

彼が「ハワイに行きたい」と言わなければ、
きっとこの旅は生まれなかった。

願いは、そのまま叶わなくても、
ふたりを新しい景色に連れていってくれる。

 


【結び】

ハレクラニの白い風に包まれた数日間は、
私にとっても宝物のような時間だった。

彼の願いに寄り添って、
できる形で叶えてあげる。

その優しさが
ふたりの関係をそっと支えている気がする。

またいつか、
彼が何か願いを言ったら、
どうやって“今の私たちに合う形”にできるか考えたい。

願いをまるごと叶えられないこともある。
でも、寄り添うことで見える景色がある。

その景色を、これからもふたりで見ていきたい。

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この記事を書いた人

菊池百合子|50代・飲食店経営・海と山のある地方都市在住
家を手放して暮らしを再設計し、
50代からのお金・不動産・介護・働き方を整えてきた生活者です。
不動産売却の実体験、介護と仕事の両立、NISAや高配当株の運用など、
「人生後半を軽やかに生きるヒント」を等身大で発信しています。

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