血圧計が呼び戻した小さな奇跡

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笑いの神様が降りてくる日

介護の毎日は、予想外の連続だ。
しんどい時もあるし、不安になる瞬間もある。
でもそんな中で、ふいに“笑いの神様”が降りてくる日がある。

今日はまさにそんな一日だった。


■ 楽しみにしていた「焼肉の日」

その日は、以前から夫が強く希望していた外食の日。
「焼肉が食べたい」というリクエストに応えるため、数日前から予定を立てていた。

迎えに行くと、夫は珍しく目に力があって、
顔色も良く、声もはっきりしていた。
念のため血圧を測ってもらうと、数字も安定。
看護師さんからも「今日は調子いいですね、楽しんできてください」と外出許可が出た。

私も「久しぶりにゆっくり食事できるかも」と期待が膨らんだ。


■ 焼肉屋で起きた“可愛い事件”

ところが焼肉屋に着いて少し経つと、夫の顔色がじわじわと悪くなってきた。
きっと血圧が下がってきているんだろう。
意識も朦朧としてきて、今にも眠りそうな状態。

なのに——
肉への欲望だけは消えない。

眠気と戦いながらご飯を食べようとする小さな子どもみたいに、
夫はフラフラしながらも箸を肉へ伸ばす。
肉への執着。

その姿がなんとも愛おしくて、
「いや、この状態でも食べるんだ…?」
と、心配しつつもつい笑ってしまった。

お店の方もすぐ気づき、
「ゆっくりで大丈夫ですよ」と優しく声をかけてくださり、
帰る時はなんと車まで移動を手伝ってくれた。
本当にありがたい。


■ 帰宅後はぐったり、そして再び“血圧計”登場

施設に戻ってからも夫は完全にぐったり。
話しかけても「うん…」しか言わない。
車椅子に座らせても体が傾いてしまう。

「これはやっぱり血圧だな…」
と判断して、部屋に戻って看護師さんに血圧計を測ってもらう。

腕に巻いて、
シュコシュコ…
と空気を入れていく。


■ 「ムクッ」と奇跡の復活

その瞬間。

さっきまでぐったりとうなだれていた夫が、
まるで空気を入れたビニール人形みたいに——

ムクッ

と起き上がった。

あまりにもタイミングが良すぎて、
思わずナースさんに言ってしまった。

「今、主人に空気入れましたよね?」

ナースさん、涙が出るほど爆笑。
私もつられて大笑い。
さっきまでの不安が嘘みたいに軽くなった。


介護の中にも楽しさも笑いもある

介護の中には、
しんどさも、不安も、心が折れそうな瞬間もある。

でも同じくらい、
こんなふうに“ふっと笑える瞬間”もちゃんとやってくる。

あの日、血圧計は
不安も安心も、そして笑いも連れてきた。

これが、私の介護のリアル。


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この記事を書いた人

菊池百合子|50代・飲食店経営・海と山のある地方都市在住
家を手放して暮らしを再設計し、
50代からのお金・不動産・介護・働き方を整えてきた生活者です。
不動産売却の実体験、介護と仕事の両立、NISAや高配当株の運用など、
「人生後半を軽やかに生きるヒント」を等身大で発信しています。

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